TAKU OSHIBA / uneristudio

NOTE

 

「花粉襲来」の記録

そう、忘れもしないあれは 2011 年3月 10 日、震災の前日である。

私はレコーディングに参加した CD のジャケット撮影をするべく T 市を訪れていた。
当時の私はまだ春に怖いもの無し。自分の生まれた季節でもある春を心から愛し、その訪れを心から待ち望んでいたのだ。

T 市は東京の郊外。閑静な住宅地と豊かな “自然” に溢れていた。
撮影の舞台まではそんな樹々に囲まれた丘を登ることになる。
「ああなんて良い天気なんだろう、春はもうすぐそこまで近づいている。今年もあの澄んだ青空が楽しみで仕方がない。」

そんな歓喜も束の間、みるみるうちに身体に異変が起こる…

鼻の奥が ”つーん” としたかと思うと、もうそれからというものくしゃみが止まらない。目は異常なかゆみで、それを手でこするものだから真っ赤に充血して涙を流している。初めは何が起きたのか分からなかった。酷い風邪でもひいたのか?インフルエンザか?

いや違う、きっとこれは、これこそが噂に聴いていたあの “花粉症” である。

春になるたびに哀れんで見下してきたあの花粉症患者についに私がなってしまったのだ。
つらい。つらい。つらすぎる。

(写真: T市)