NOTE
3つのテントス について (未完
10/2 のソロライブでも取り上げる予定の 『Drei Tentos / 3つのテントス』 という作品。
20世紀を代表する大作曲家の一人、H.W.ヘンツェ のギター曲です。
ヘンツェ はドイツ出身→イタリア在住。 現在も85歳でご存命、のはず。
ソロをはじめ、ギターと他楽器のための (しかもかなり異色編成の) 作品も多く残している稀な作曲家。
(学生時代、ファゴット・ギター・弦楽トリオ のための作品も演奏したことがあります。)
『3つのテントス』 は3つの短い小品 (全部でも6分弱) から成るのですが、
元々はこれだけではなく、長大な室内楽作品から抜粋・出版されたもの。
元曲は 『kammermusik 1958 / 室内楽1958』 という作品。
テノール、ギターと8つの楽器 (Cl, Hr, Fg, 弦5部) のための という大編成ぶり。
詩人 F.ヘルダーリン の 『In Lieblicher Blaue… / やさしい青空に…』
という詩をテノールの歌詞とし、40分以上かけて演奏・歌い上げる、まさに大作。
早速こちらの譜面・音源も入手。
作品は、8楽器の (ほぼ) オケ部分、テノール×ギターのデュオ部分、ギターソロ部分、全体合奏部分 からなり、
間奏的に挟まれるギターソロ部分3箇所、これを抜粋して 『3つのテントス』 としているのです。
Tento / テント とはルネサンス期における “リチェルカーレ” = 器楽曲に用いられた名称。
さらに、抜粋 『3つのテントス』 の出版譜に同時収録されている 『ヘルダーリンの詩による3つの断章』。
これはテノールとギターのための作品なのですが、
これも上記の同デュオ部分3箇所を抜粋したものと分かり、同時収録の理由もなるほど納得。
これで、『3つのテントス』 が書かれている譜面が2種類揃ったことに。
まず元曲、 『室内楽1958』 には全体を通じて、各部分ごとににタイトルがついている。
歌のある部分は、歌詞の歌いだしの言葉がそのままタイトルになっていて、
8楽器による演奏部分は、『前書き』 『ソナタ』 など形式的なタイトル。
そしてギターソロ部分 (3つのテントス) にもそれぞれタイトルがついている。
しかし抜粋として出版されてる方には、ⅠⅡⅢ 以外タイトルはついてない、これは不思議。
断章として同時収録されているテノール×ギターの3曲には、元曲と同じタイトルがついている。
なんでソロの方にはタイトルをつけず出版されたのか気になります (写真参照。 これで、
『Drei Tentos / 3つのテントス』
TentoⅠ : Du schönes Bächlein / 美しい小川
TentoⅡ : Es findet das Auge’ oft / 瞳の見いだすものは
TentoⅢ : Sohn laios’ / ライオスの息子
ということは分かった。
タイトルがある事は知ってたのだけど、裏づけと背景が知れてよかった。
ただ肝心のヘルダーリンの訳詩が、どうやら手軽に手に入らないみたいで、
詩の中でこの3つのタイトルがどう絡んでるのかがいまいち分からない。
詩には出てこない言葉らしいことはなんとなく分かったのだけど。
それと大した理由はないのだろうけど、
全体の中でこの3つのギターソロ部分だけやたらに変拍子を多用している気がする。
あと記譜が1オクターブ高い…まあこれは出版上ミスかな。
でもまずヘンツェの作曲と、記譜に対するスタイルを勉強してみないとどうにも分からない。
ヘンツェの作品はほぼ無調ではあるものの、形式・リズムなど非常に古典的。
さらに無調なのにとてもロマンチックで大好きな作曲家の一人です。
結局、新しいもの、今あるものを知るためには、そのルーツを辿って学ぶしかないんだな。
最近どこでどんな音楽をやっていてもいつもこの話になる。非常に大切なことなんだな。
という訳で、これだけ書いて特に目新しい発見には至らず。
まあもう少し色々調べてみよう。
まずは訳詩を読んでみたい。
写真1:
原曲譜のTentoⅠ。ちゃんとタイトルが書かれている。
大譜表、しかし正確には記譜が1オクターブ高く書かれてる。
でもギターには出せない音域なので、実はこれが想定、とかではないはず。
写真2:
抜粋譜のTentoⅠ。タイトルはなく、Ⅰとだけ書かれている。
1段譜、これが本来のギター譜の書き方。(記譜より1オクターブ下が鳴る。
細かい表情記号などには一切変更は見当たらない、はず。